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11.30.2012

[SALE] JMI Rangemaster


 前回、JMIのMK1ミック・ロンソン・モデルのアウトレット・セールをやりましたが、既に完売しました。お買い上げいただいた皆様、有難うございました。おかげでなんとか年末を迎えることが出来そうです(笑)。
 そんなワケで今回は、英JMIのアウトレット・セール第2弾、となります。今回もアウトレット品てことで、値段を下げて販売しますが、実はアウトレットな部分はどこもなくて(笑)、単純に長期在庫になっちまったから売りさばいてしまおう、という理由でしかありません。今回はRANGEMASTERを4つほどセールとして売り出します。ご興味をお持ちの方は、是非この機会に、よろしくお願いします。
 オリジナルのDALLAS RANGEMASTERに関して、それから現在イギリスのJMIが製造しているRANGEMASTERのスペックや商品詳細に関しては、以前のポスティングも併せてご参照いただければ幸いです。


1. JMI RANGEMASTER (NORMAL OC44)
 まずはこちら。「通常版」としてJMIが製造している、RANGEMASTERの復刻品です。いにしえのDALLAS RANGEMASTERの復刻品として、JMIが商標登録も保持しているブツですから、公式の復刻ということになります。内部の構造はもちろん、この可愛らしい(笑)外観もすべてオリジナル同様に復刻されたものです。
 トランジスタにはOC44を使用。トランジスタにはブランド名が記載されていませんが、60〜70年代のNOSパーツ(シルバーキャップ)を使用。ご承知とは思いますが、裏蓋からはアウトプット・ケーブルが直でのびています。写真を取り忘れたので恐縮ですが、その辺は予めご了承下さい。数量は2ケ、価格は30000円(送料/税込)となります売却済みとなりました)。


2. JMI RANGEMASTER (MULLARD OC71 LTD)
 それからこちら。JMIが限定20ケで製造した、RANGEMASTERの限定品です。トランジスタに英MULLARD製のOC71(ブラックキャップ)を用いたものです。JMIも商品説明で語っていますが、定番と言われるOC44トランジスタよりも、ややハイエンド、というかエッジの部分がギシギシと目立つ、というタイプになります。

 余談になりますが、当方が所持しているオリジナルの65年製RANGEMASTERもトランジスタはOC71です。なので弾き比べすることができましたが、正直音は同じです(笑)。そりゃ当然ですよね。JMIが製造したOC71版RANGEMASTERは、公式サンプル動画があるので、そちらもあわせてご参照下さい。
上に記載した「通常版」とこちらの「限定版」は、見た目はまったく同じです。違いは「トランジスタが違う事」以外は、裏蓋に「MULLARD OC71」と書いてあるかどうか、だけになります。
数量は1ケのみ、価格は40000円(送料/税込)となります売却済みとなりました)。


3. JMI PLAYER'S SERIES TREBLE BOOSTER
 それと、最後のこちら。実は今回売ろうかどうしようか最後まで悩んだブツでした(笑)。というのも、ちっちゃくて便利、しかも音も十分満足いくブツ、と個人的に思ってたのですが、結局自分では使うことはありませんでした。なので、新品です(笑)。こちらは「PLAYER'S SERIES」というシリーズ名でJMIが製作した、コンパクト・タイプのトレブル・ブースターです。回路はRANGEMATSERと同じですが、基板構成も(当然ながら)違いますし、トランジスタはAC127を使用、LEDと電源アダプター対応、というユーザー・フレンドリーな仕様です。既にPLAYER'S SERIESは本国で全種廃盤となっており、最後の販売となります。
こちらも数量は1ケのみ、価格は18000円(送料/税込)となります売却済みとなりました)。


以上、今回は全部で4ペダル、の販売となります。冒頭でも書きましたが、アウトレット・セールではありますが商品はすべて新品のブツです。箱、証明書、本国イギリスでの保証書、あと布製のJMI袋が付きます。

 もしご希望の方がいらっしゃれば、どのモデルをご希望か、を明記の上、こちらまで直接メールにてお問い合わせいただければと思います(ただし勝手ながら匿名でのメール/ご質問には基本的にお答えしていません。お名前の記載をよろしくお願いします)。限定数での販売/先着順、となりますので、売り切れの際はご了承下さい。また、JMI製品ではこの他にももう少しアウトレット品を用意するつもりですので、今後の続報もご期待ください。



 上記の英JMIとは関係ありませんが、最後に余談です。以前MENATONEのTHE PIGというカスタムメイドのエフェクターを当ブログで紹介しましたが、「オレも欲しいんだけど、どうやったら買えるの?」というご連絡をいくつか頂きました。基本的に直接メールでMENATONEにオーダーするしかないのですが、ビルダーのブライアン・メナ氏から「通常製品の製造でメチャ忙しいから、カスタムメイドを受け付けてるヒマがない。おそらくもうTHE PIGは作らないだろう」みたいなメールを貰いました。んー、惜しい、惜しすぎる。TONE BENDERとは関係ないですが、個人的にここ数年では最も「オッ!こりゃスゲエ」と感動したペダルだったからです。そこで、ブライアン・メナに無理を言って、3ケだけ当ブログ向けに作ってもらうことになりました。入荷したら、改めて告知しますので、もしご希望の方はそれまでお待ち下さい。
ていうか、実はMENATONE製品も、入荷まですごーく時間がかかります。なので、正直今でも不安です(笑)。実際に入手してから、改めてご報告したいと思います。

9.29.2011

JMI - Dallas Rangemaster Reissue

 
 さて、RANGEMASTERに関して今回も続けます。オリジナルに関しては、中身やユーザーを含めて過去に書いてきた通り、そして当方は魔法の箱等と形容してますが、もうすでに有名なエフェクターなので、実はそれほど改めて発見したりすることはないかもしれません。随分昔からクローン製品が沢山ありましたしね。

 ですが、イギリスのJMI社から、2009年にこのRANGEMASTERの復刻品が発売された時はビックリしました。中身はもちろんですが、外身、つまり筐体までオリジナルと同じように作ってあったからです。今回はその復刻品のご紹介です。
 とかいいつつ、いきなりですが既に面倒臭いことに(笑)現JMIからはRANGEMASTER、もしくはTREBLE BOOSTERと呼ばれるエフェクターが今5種類もあって(笑)、全部RANGEMASTERの回路だったりもします。その辺をキチンと整理しつつ、順に見ていきたいと思います。

1. まずは一番基本となるJMI RANGEMASTER復刻品です。ご覧のように完璧に見た目が復刻されているばかりでなく、回路や箱まで(!)オリジナルと同じ様に作られました。とはいえ、今は当時と時代が違います。故に一部のパーツは違うものが使われています。
 トランジスタはシルバーキャップのOC44ですが、これはMULLARD製品ではなくて、おそらくNKT製のものかと思われます。60年代のゲルマニウム・トランジスタのNOSパーツです。また。ポットは現在一般的なフツーの(笑)ポットに、そしてキャパシタもイエローキャップの新品が使われています。
 ちなみに、電池の交換は後ろの真鍮色のパネルにある6角ナットをはずして簡単に行えますが、写真にあるように回路/基板部分を写真撮影しよう、と思った時には、筐体の底にあるネジを5つ外して、筐体上部分をズズズズっと滑らせて外します。正直これがスッゴイ面倒です(笑)。
 オリジナルもそうですが、筐体背面から延びているアウトプット・ケーブルは、長さが40〜50cmくらいしかありません。なので、これを直でアンプに刺すためには、RANGEMASTERは当然ながらアンプの上とかそばに置かないといけませんよね。そういう所までこのリイシュー品は律儀に復刻されていますが、正直使うにはやっぱり多少の面倒さはあります。

2. 上で「基本となる」と書きましたが、それとは別に限定版として、2010年にJMIは限定で、60年代の英国MULLARD製ブラックキャップ・トランジスタを用いたRANGEMASTERを制作/発売しました(たしか20ケか25ケか、そんな数だったと思います)。しかもそれは2種類あって、ひとつはMULLARD OC44を用いたもの、もうひとつはMULLARD OC71を用いたもの、というわけです。
 TONE BENDERで英国MULLARD製トランジスタを採用した時もそうでしたが、やっぱりお値段は高いです。それは純粋に英国MULLARDのトランジスタがもう殆どないから、につきます。当方でも一応このOC44、OC71版両方とも各1ケずつ仕入れましたが、今後仕入れるかどうかは決めていません。もし興味をもたれた方はお問い合わせ頂ければと思います。

3. 以上のような復刻精神に熱をいれた(笑)リイシュー品とは別に、もうちょっとコンテンポラリーな仕様のトレブル・ブースターもJMIから発売されています。
 まずは、RANGEMASTERとまったく同じ回路を、TONE BENDERと同じ筐体にブっ込んでみた、という JMI TREBLE BOOSTER があります(写真左)。このエフェクターに使用されたトランジスタは一番上の「基本の」RANGEMASTERと同じ、NKT製OC44ですが、当然のように「足でオン/オフできる」というデカいメリットがある訳ですよね。この製品は価格も1.のRANGEMASTERと同じなんですが、生意気を言わせてもらえれば、それほどカッコイイとは思えません(笑。そういうわけで当方ではこの3.のトレブルブースターは取り扱いをする予定がありません)。

4. まだあります。JMIは最近、ちっちゃい筐体にRANGEMASTER回路をブッ込んだ PLAYER'S SERIES TREBLE BOOSTER を発売しました。こちらはNPN回路にするために、トランジスタにはAC127が使用されています。LEDインジケータ付き、そして9Vアダプター使用可能、そしてなにより圧倒的に小さい筐体(MXRより小さく、薄いです)に収まったこのペダル、さすがに使い勝手は最高です。こちらは新製品でもありますし、JMI製品中最もお手頃な価格ということもあって、既に取り扱いしています。

 商品の紹介は以上になりますが、もちろんこの復刻版RANGEMASTERは、イギリスJMIがそのデモ動画をいくつか作成していますので、ここに2つ動画を上げてみます。

 左側は、上記ナンバリングでいうところの「1.」のRANGEMASTERのデモ動画です。復刻品のノーマル版、というヤツで、トランジスタにシルバーキャップのOC44を用いたものです。ご覧のように、ギターはテレキャス、アンプはJMIのAC30/6TB復刻品を使っていますね。それと、右側のほうの動画は英国MULLARD製のブラックキャップOC71をトランジスタに用いて超限定版として制作されたもの、の動画です。こちらの動画はトランジスタの違いがどうエフェクターに反映するか、を比較できるように載せてみました。似たような音といえば似たような音ですが(どちらもRANGEMASTERですから当然ですけど。笑)、中のテロップで説明されているように、OC71のほうが「歪みはちょっと弱い、でもそのかわりエッジがより強調される」と書いてありますね。パリパリした印象があると思われます。ただし、マイキングのせいで左(OC44)の方はやや残響音が厚めに入ってしまってるので(録画した場所の問題かも)、単純に比較できませんが、言わんとしていることはお判りいただけるのではないかと思います。

 さて、最後に余談をいくつか。上記した2.の「高級版」RANGEMASTERには、さらに少数限定で「イエロージャケットのMULLARD OC44トランジスタ」を用いたものもありました。限定10ケだったと思いますが、当方がJMIのディーリングを始めたときには既に全部売り切れになっており、今はもう作っていません。へー、こんなトランジスタがあったんですね。知りませんでした。
 それから、以前もチョロっと書きましたが、現在のJMIは「DALLAS RANGEMASTER」を商標登録しています。なので、最初にJMIがRANGEMASTERを復刻した時に、65年のDALLAS製オリジナルとおんなじラベルも復刻できたわけです。その後この箱のラベルは無くなってしまったんですが、先日「あれ、可愛いからまたあの箱で出荷してくんないかなあ?」と本国にリクエストを出しました。「ん、わかった。検討してみる」とのことです。たかが箱、されど箱(笑)、というわけで、またピンク&白のラベルにお目にかかれると嬉しいですね。
 

9.22.2011

Dallas Rangemaster (Pt.2)

 
 過去に当ブログでもいろんなところで触れていますが、RANGEMASTERと言えば有名なギタリスト達が重要なディヴァイスとして使っていることが知られています。以下、その主な組み合わせをちょっとまとめて列挙してみたいと思います。

 まず、こちらで写真をババンと使ってしまいましたが、当方が一番気になって仕方ない(笑)RANGEMASTER使いの人、マーク・ボランです。彼の場合は使用環境もちょっと特殊で、ギターはストラトとレスポールが半々、アンプはオレンジのスタックだったり、HHというブランドのカスタム・トランジスタ・アンプだったり、VOX AC30だったり、そしてあの有名なVAMPOWERだったり、とあまり統一されていませんでした。
 ちなみにVAMPOWERのアンプはアルバム『電気の武者』のジャケで有名ですが、もの凄くレアなアンプなんスよね。

 個人的なことを勝手ながら書かせていただければ、RANGEMASTERの音、ということで最も当方の耳に馴染みがあるサウンドは、T-REXの「20TH CENTURY BOY」のイントロなわけです。別に浦沢直樹作の漫画/映画にそれほど興味があるわけでもなく、もっともっと前から、ただ単純に当方が子供の頃からそのイントロは強烈に素敵なサウンドに思えたわけです。
 72年の来日中に日本の東芝EMIのスタジオで録音された、ということでも有名なその「20TH CENTURY〜」ですが、イントロにはギターが2本入ってて、使用アンプもちょっと判らないので正確なセッティングまでは追い込む事が出来ませんが、紛れもなく最高のRANGEMASTERサウンドだと思います。曲も最高スけど。

 今はもうYOUTUBEを含めいろんなところでマーク・ボラン/T-REXのライヴっていうのを確認することが出来ますが、ライヴになると、もの凄いデカい音でギター弾くんですよね、この人。ちなみに、まだそんなに売れてなかった60年代にマーク・ボランにリードギターの弾き方を教えたのは、当時売れっ子のセッション・ミュージシャンだったジミー・ペイジなんだそうです(一時マネージャーが同じ人でしたもんね)。
 それはともかく、T-REXのライヴ映像では、いつもアンプの上や床の上にRANGEMASTERがあることが確認できます。もちろん写真もいろいろ残っているわけですが、実際に手にしている写真を見ると、オオッと盛り上がってしまいますね(笑)。

 ロリー・ギャラガーに関しては以前も書きましたが、ギターはストラト、そしてアンプはVOX AC30です。ただしアンプの入力チャンネルはトップブースト側ではなく、ノーマル・チャンネルの方を使っていた模様です。後にクイーンのブライアン・メイがトレブル・ブースターを使用することになるのは、ロリー・ギャラガーの影響を受けたから、なんだそうです。
 左にロリー・ギャラガー率いるテイストの1970年のスタジオ・ライヴ動画を貼りましたが、すげえ画質が奇麗でビックリしますけど、それよりも嬉しいのは、例のボロボロのストラトを、RANGEMASTERに直で(カールコードで)刺していて、VOX AC30でならしてる、その様子が絵と音で両方で確認できることです。さらにさらに、この動画では曲中にギター側のボリュームを変化させている箇所があり(動画の1:02付近と2:41付近)、そのことで音と歪みがどう変化していくかが如実にわかる、という事ですよね。もしRANGEMASTERに馴染みがなく、どんな音のエフェクターなのか知りたい、という場合は、この動画が一番理解しやすいんではないかな、と思います。

 ブラック・サバスのトニー・アイオミの場合は、ギブソンSGスペシャル(ピックアップはP90ですが、メタルカバーがつけられたカスタマイズPU)とRANGEMASTERの組み合わせで有名ですね。アンプは初期のライヴ映像ではORANGE、PARKやLANEYのアンプを使ってるものが確認できます。右に1970年のライヴ動画を貼りましたが、ヘッドアンプの上にチョコンと載せられたRAMGEMASTERの姿を2:13の箇所で確認することができますね。
 後にアイオミ氏はRANGEMASTERに改造を施し、ブースト周波数を変更した模様です。また、アイオミ氏はアナログマンが「BEANO BOOST」を発売したときに最も最初に手に入れた一人で、今でも使用しているとのこと。

 エリック・クラプトンに関しても以前から折に触れて書いてますが、彼がRANGEMASTERを使っていたのはどうやら65〜66年周辺のごく限られた時期のようで、例の66年のアルバム「JOHN MAYALL BLUES BREAKERS WITH ERIC CLAPTON」、それとクリームの初期だけでしかその音を聞けないようです。当時はギターが60年製レスポール、アンプはマーシャルのコンボ(JTM45)です。その後クラプトンはFUZZ FACEを導入し、クリーム中期〜ソロ(おそらく70年代半ばまで)はずっとFUZZ FACEを使っていたようです。

 オマケとして書いておきますが、クイーンのブライアン・メイが使用していたトレブル・ブースターは、初期のころはRANGEMASTERの回路を参照して自作されたカスタム・ボックス(一番最初に自作したのは、同じくクイーンのベーシスト、ジョン・ディーコンだった、という話です)、75年以降はピート・コーニッシュに作ってもらったトレブル・ブースターです。どうやら彼がオリジナルのRANGEMASTERを持っていたことも過去にあったようですが、録音に際して使ったという話はあまり聞きません。言うまでもありませんが、ギターは「レッド・スペシャル」、それからアンプはVOX AC30ですよね。

 また、リッチー・ブラックモアが使用していたトレブル・ブースターはJHS(JOHN HORNBY SKEWS社)の青いトレブル・ブースターでした。TONE BENDER MK1の時とならんでここでも名前の出てくるJHS社、恐るべし、ですね(笑)。ご承知の通り、リッチーのギターはラージヘッドのストラト(パープル初期では335でしたが)、それからアンプはマーシャルMAJOR(後期型)200Wです。拾い物画像ですが、JHS TREBLE BOOSTERの画像を見つけたのでここに載っけておこうと思います(右の写真2枚)。どうみても、RANGEMASTERのパクリですよね(笑)。

 余談ですが、小さな鉄製の筐体に入ったVOXトレブル・ブースターというものも、66年頃に発売されています。これはイタリアのEF-ELという工場でOEM製造されていたと思われるブツで、バーズのロジャー・マッギンが(リッケンバッカーとの組み合わせで)使用していた、ということで知られています。

 そういえば 本来なら前回のポスティングで掲載するべきだったんでしょうが(忘れてました。笑)、65年のオリジナルRANGEMASTERの回路図をおこしたので、ここに掲載しておきます。なんてシンプルで美しい回路でしょうか(笑)。実は上に掲載したJHS社のブツも、そしてVOXのブツも、凄く細かい数値違いはあれど、回路はこのRANGEMASTERのものとほぼ一致します。現在はこの回路に更に多種多様なモディファイを加えた製品もありますが、既に最初の時点である種完成された回路、ということも言えるかと思います。(この項つづく)
 

9.15.2011

Dallas Rangemaster (Pt.1)

 
 前回も予告しましたように、しばらくDALLAS RANGEMASTERについて続けて書いてみたいと思います。その歴史背景に関しては、いろんな人に聞いてみてはいるのですが、なかなか本国イギリスでもあまり詳しい背景が今も判らないことが多いようで(例えば回路の設計者等)、不明な点も多々あるとは思いますが、おつき合いいただければ幸いです。

 いきなりの余談で恐縮ですが、60年代の英ダラス社には実はエフェクターのRANGEMSTER以外にも、同じ「RANGEMASTER」という名前を持ったアンプ製品が存在します。このアンプの中身はあまり判らないのですが、しばらく前までは「レンジマスター? ああ、そういうアンプあるよね」なんていう会話がネット上でも時々ありました。これは「昔はエフェクターのほうよりもアンプのほうが有名だった」というワケではなくて、単純にマニアな方が「俺そんな些細なことまで知ってるぜ」という意味でワザと使っていた、と思わしきフレーズです。まあ、いつの時代もどこの世界でも、そういう人はいるわけですよね(笑)。どうでもいい話です。

 さてさて、ダラス社から1965年に発売されたRANGEMASTERは、今ではもちろん「トレブル・ブースター」として知られるエフェクターです。
 一説では、この回路を設計/制作したのはジョニー・ダラス氏、つまりダラス社の社長だ、という文献を見ることがありますが、ウラは取れていません。また、1965年に発売が開始され、67年までにおよそ300ケが製造/販売された、という記述を見つける事ができます(その後、ダラス社はアービター社と合併し、ダラス・アービター社となります)が、RANGEMASTER自体は69年まで製造された、という記述もあるので、実際にはもう少し多く作られただろうと思われます。
 いずれにしろ同じ時期のTONE BENDERなんかに比べたら量が沢山あることは事実ですし、現実に今探しても、それなりにオリジナルを見つける事はできます。ただし、もちろん容易には入手できませんし、高い値段をフっかけられることが多いわけですけど。

 ここではいくつかのオリジナルRANGEMASTERの写真を載せてみました。それぞれちょっとずつ違ってて面白いですよね。上から順にこの古いエフェクター達を見ていきたいと思います。
 一番最初のが当方の所有物で、トランジスタがOC71のモデルです。なんでOC71かというと実は偶然ではなくて、わざわざOC71版を探したからです。なぜか。それは「マーク・ボランが使ったRANGEMASTERは、間違いなくOC71版だったから」という話を聞かされたからです。俺って単純(笑)。マーク・ボランに関しては、別項にてちょっと詳しく触れたいと思います。ご覧のようにトランジスタはブラックキャップの英国MULLARD製、キャパシタは黒いHUNTSのもの。残念ながら裏蓋が無くなっていますが、表側のクロームのトリムが(珍しく)残っています。
 それから以前も掲載しましたけど(野外で撮影された写真2枚)、イギリスのPAISLEY TUBBY EFFECTSさん所有のRANGEMASTERは、トランジスタがブラックキャップのOC44、キャパシタはMULALRDのマスタードになってます。このRANGEMASTERはアウトプット・ケーブルを排除し、後にアウトプット・ジャックを増設してありますね。

 それと、次に掲載したものは DISCOFREQ's DATABASE から引っ張ってきた写真です。シルバーキャップのOC71が搭載されているモノには、黒いHUNTSのキャパシタが乗っていますが、当方のブツとはそのサイズが異なります。この人はなんと65年当時の箱まで持っているようで、ピンクと白の素敵なラベルも拝見できます。箱に関しては後ほど別項でちょっと改めて触れます。それにしてもこの方、3つも持ってんですねぇ。スゴイっす(最下部の写真参照)。

 以上でも判るように、60年代ダラス社製RANGEMATSERでは、トランジスタにOC44とOC71を使ったものがあります。また、ともに英国MULLARD製のゲルマニウム・トランジスタではありますが、ブラックキャップのものとシルバーキャップのもの、両方が存在することも判っています。

 では同じRANGEMASTERでも、OC44とOC71は音がどのくらい違うのか、と言えば、実はそんなに大げさに違うわけではありません。ただし2つを比較する上で言えば、OC71のほうがちょっと音のエッジが強く出る、という傾向があります。
 米国のエフェクト・ブランドで、自ら「BEANO BOOST」というRANGEMASTERクローンを発売しているアナログマンのHPでも、そのトランジスタの違いに関する記述があります。いわく、OC44のほうがちょっとスムースでOC71の方がエッジと高い倍音の出方が強い、と。

 TONE BENDERと比較しても単純極まりない(というか、歪み系の中では最もシンプルな回路でしょうね)その回路構成のために、使用トランジスタの色はモロにエフェクターの出音に出ます。RANGEMASTERはその歪みのマイルドさが好まれる、という場合も多いので、エッジが際立つOC71よりもOC44のほうが好み、という人が多いようですね。

 ご覧のようにオリジナルのRANGEMASTERは、大げさでマヌケすぎるポット、ラグ板に荒々しく配線された回路、バカでかいHUNTSのキャパシター(註:以前も触れましたが、HUNTSでないキャパシタが採用されたモデルもあります)、そしてゲルマニウム・トランジスタ1ケだけで強引にブーストしてしまうというシンプルな構造、なのに無意味にデカい筐体、演奏中に絶対にオン/オフできないスイッチ、そして、使用するのにジャマ臭くてしょうがない、直で延びたアウトプット・ケーブル、という(笑)、今から考えれば非効率この上ないダメダメな(笑)ギター・エフェクターですが、それでも「魔法の箱」の名に相応しい、素敵なオーヴァードライブをもたらしてくれる箱なわけです。

 ツマミは1ケですから、使うのにそれほど悩むこともありません。どんなアンプとどんなギターの組み合わせであっても、間にRANGEMASTERを挟めば「ギャーン」と一瞬にして独特の美しいゲインと圧倒的な音量を稼ぐ事ができます。単純にトレブル帯域をブーストしているわけではなく、その加味された倍音成分がエレキギターにはドンピシャでフィットする、ということになりますかね。

 「市販されているギターアンプそのままでは、必要な音は出ない」と断言したのは元マルコシアス・ヴァンプの秋間経夫氏(アンプ・ビルダー/リペアマンとしても有名ですよね。しかし、MARCHOSIAS VAMP、もの凄いバンド名ですね。笑)ですが、その言葉にはかなり含蓄があり、一発で納得するのは難しいかもしれません。でも、意味は単純ですよね。それはインタビュー動画を見ればすぐご理解いただけると思います。
 秋間氏はアンプを例に上げてその話をされていますが、話を戻せば、ダラスのRANGEMASTERってエレキギターに必要な帯域をグワっと持ち上げてくれるエフェクターだと思われます。だから単純なのに、最高のエフェクターなんですよね。

 「アンプ直の音こそ至高」というギタリストが多いことはもちろん承知の上ですが(余談ですが、実はミック・ロンソンも同様の主旨の発言をしてるんですよね。自分はファズとワウ使ってるクセに。笑)、実はアンプ直だとどんなに工夫しても、なかなかドンピシャで欲しい音が出てこない/絶対に出ない、なんていう体験は、星の数ほど世間に存在してると思われます。そんな時にやはりこの「魔法の箱」RANGEMASTERがあると、世界観が変わりますよ、なんて当方は思っているわけです。(この項続く)