9.22.2011

Dallas Rangemaster (Pt.2)

 
 過去に当ブログでもいろんなところで触れていますが、RANGEMASTERと言えば有名なギタリスト達が重要なディヴァイスとして使っていることが知られています。以下、その主な組み合わせをちょっとまとめて列挙してみたいと思います。

 まず、こちらで写真をババンと使ってしまいましたが、当方が一番気になって仕方ない(笑)RANGEMASTER使いの人、マーク・ボランです。彼の場合は使用環境もちょっと特殊で、ギターはストラトとレスポールが半々、アンプはオレンジのスタックだったり、HHというブランドのカスタム・トランジスタ・アンプだったり、VOX AC30だったり、そしてあの有名なVAMPOWERだったり、とあまり統一されていませんでした。
 ちなみにVAMPOWERのアンプはアルバム『電気の武者』のジャケで有名ですが、もの凄くレアなアンプなんスよね。

 個人的なことを勝手ながら書かせていただければ、RANGEMASTERの音、ということで最も当方の耳に馴染みがあるサウンドは、T-REXの「20TH CENTURY BOY」のイントロなわけです。別に浦沢直樹作の漫画/映画にそれほど興味があるわけでもなく、もっともっと前から、ただ単純に当方が子供の頃からそのイントロは強烈に素敵なサウンドに思えたわけです。
 72年の来日中に日本の東芝EMIのスタジオで録音された、ということでも有名なその「20TH CENTURY〜」ですが、イントロにはギターが2本入ってて、使用アンプもちょっと判らないので正確なセッティングまでは追い込む事が出来ませんが、紛れもなく最高のRANGEMASTERサウンドだと思います。曲も最高スけど。

 今はもうYOUTUBEを含めいろんなところでマーク・ボラン/T-REXのライヴっていうのを確認することが出来ますが、ライヴになると、もの凄いデカい音でギター弾くんですよね、この人。ちなみに、まだそんなに売れてなかった60年代にマーク・ボランにリードギターの弾き方を教えたのは、当時売れっ子のセッション・ミュージシャンだったジミー・ペイジなんだそうです(一時マネージャーが同じ人でしたもんね)。
 それはともかく、T-REXのライヴ映像では、いつもアンプの上や床の上にRANGEMASTERがあることが確認できます。もちろん写真もいろいろ残っているわけですが、実際に手にしている写真を見ると、オオッと盛り上がってしまいますね(笑)。

 ロリー・ギャラガーに関しては以前も書きましたが、ギターはストラト、そしてアンプはVOX AC30です。ただしアンプの入力チャンネルはトップブースト側ではなく、ノーマル・チャンネルの方を使っていた模様です。後にクイーンのブライアン・メイがトレブル・ブースターを使用することになるのは、ロリー・ギャラガーの影響を受けたから、なんだそうです。
 左にロリー・ギャラガー率いるテイストの1970年のスタジオ・ライヴ動画を貼りましたが、すげえ画質が奇麗でビックリしますけど、それよりも嬉しいのは、例のボロボロのストラトを、RANGEMASTERに直で(カールコードで)刺していて、VOX AC30でならしてる、その様子が絵と音で両方で確認できることです。さらにさらに、この動画では曲中にギター側のボリュームを変化させている箇所があり(動画の1:02付近と2:41付近)、そのことで音と歪みがどう変化していくかが如実にわかる、という事ですよね。もしRANGEMASTERに馴染みがなく、どんな音のエフェクターなのか知りたい、という場合は、この動画が一番理解しやすいんではないかな、と思います。

 ブラック・サバスのトニー・アイオミの場合は、ギブソンSGスペシャル(ピックアップはP90ですが、メタルカバーがつけられたカスタマイズPU)とRANGEMASTERの組み合わせで有名ですね。アンプは初期のライヴ映像ではORANGE、PARKやLANEYのアンプを使ってるものが確認できます。右に1970年のライヴ動画を貼りましたが、ヘッドアンプの上にチョコンと載せられたRAMGEMASTERの姿を2:13の箇所で確認することができますね。
 後にアイオミ氏はRANGEMASTERに改造を施し、ブースト周波数を変更した模様です。また、アイオミ氏はアナログマンが「BEANO BOOST」を発売したときに最も最初に手に入れた一人で、今でも使用しているとのこと。

 エリック・クラプトンに関しても以前から折に触れて書いてますが、彼がRANGEMASTERを使っていたのはどうやら65〜66年周辺のごく限られた時期のようで、例の66年のアルバム「JOHN MAYALL BLUES BREAKERS WITH ERIC CLAPTON」、それとクリームの初期だけでしかその音を聞けないようです。当時はギターが60年製レスポール、アンプはマーシャルのコンボ(JTM45)です。その後クラプトンはFUZZ FACEを導入し、クリーム中期〜ソロ(おそらく70年代半ばまで)はずっとFUZZ FACEを使っていたようです。

 オマケとして書いておきますが、クイーンのブライアン・メイが使用していたトレブル・ブースターは、初期のころはRANGEMASTERの回路を参照して自作されたカスタム・ボックス(一番最初に自作したのは、同じくクイーンのベーシスト、ジョン・ディーコンだった、という話です)、75年以降はピート・コーニッシュに作ってもらったトレブル・ブースターです。どうやら彼がオリジナルのRANGEMASTERを持っていたことも過去にあったようですが、録音に際して使ったという話はあまり聞きません。言うまでもありませんが、ギターは「レッド・スペシャル」、それからアンプはVOX AC30ですよね。

 また、リッチー・ブラックモアが使用していたトレブル・ブースターはJHS(JOHN HORNBY SKEWS社)の青いトレブル・ブースターでした。TONE BENDER MK1の時とならんでここでも名前の出てくるJHS社、恐るべし、ですね(笑)。ご承知の通り、リッチーのギターはラージヘッドのストラト(パープル初期では335でしたが)、それからアンプはマーシャルMAJOR(後期型)200Wです。拾い物画像ですが、JHS TREBLE BOOSTERの画像を見つけたのでここに載っけておこうと思います(右の写真2枚)。どうみても、RANGEMASTERのパクリですよね(笑)。

 余談ですが、小さな鉄製の筐体に入ったVOXトレブル・ブースターというものも、66年頃に発売されています。これはイタリアのEF-ELという工場でOEM製造されていたと思われるブツで、バーズのロジャー・マッギンが(リッケンバッカーとの組み合わせで)使用していた、ということで知られています。

 そういえば 本来なら前回のポスティングで掲載するべきだったんでしょうが(忘れてました。笑)、65年のオリジナルRANGEMASTERの回路図をおこしたので、ここに掲載しておきます。なんてシンプルで美しい回路でしょうか(笑)。実は上に掲載したJHS社のブツも、そしてVOXのブツも、凄く細かい数値違いはあれど、回路はこのRANGEMASTERのものとほぼ一致します。現在はこの回路に更に多種多様なモディファイを加えた製品もありますが、既に最初の時点である種完成された回路、ということも言えるかと思います。(この項つづく)
 

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