3.11.2014

Sola Sound - Tone Bender MK2 SCB ver. (made by D.A.M.) part.2

 
 以前このTONE BENDERについて書いたなあ、と思い自分のブログをさかのぼって読んでみましたが、なんとそのポスティングは2011年6月29日付となっていました。んーまったくもー、3年も前じゃあないですか。こっちが驚いてしまいました。

 一体なんのことかと言いますと、2011年6月にオーダーした現行SOLA SOUND製(=D.A.M.製造)の限定版TONE BENDER MK2(ショート・サーキット・ボード・ヴァージョン)が、やっと届いたんですよウチに。現行のMACARISも、現行のD.A.M.も、まったく何考えてんでしょうか。3年待たせておくのが普通だと思ってんでしょうか。おそらく思ってるんでしょうね(笑)。

 別にMACARISやD.A.M.に文句いうつもりはないんです。だってどうせ2年は待つだろうと最初から想像できてたので(笑)。それにしても3年も経ってるのにちゃんとウォント・リストの順番に「ホラ、出来たよ?買うでしょ?」みたいなメールを律儀に(笑)送ってくるあたり、イギリス人てのは我々日本人とはやっぱり時計の進むスピードが違うのかもしれませんね。

 というワケで、3年越しの製品レビュー(の続き)となります。ご覧のように、真っ青な塗装が施されたTONE BENDER。これだけでインパクトは強烈ですよね。スクリプトの文字はオリジナルMK1.5と同じ、つまり「TONE BENDER」とだけ書いてあるタイプのデザインです。

 前回とダブリますが、この製品の出自を書いておきます。1966春頃にTONE BENDER PROFESSIONAL MK2が最初にリリースされた時、その回路基板のサイズはMK1.5と同じ横幅のものが使われていました。その後些細な回路見直しもあり、基板はより横長のものに変更になりました。長さでいうと1.5倍ほどになったわけです。で、そのMK2のごく初期の基板(=短い横幅のもの)を復刻したのが、この青いTONE BENDERとなります。

 基板は短くても、回路は3ケのトランジスタが用いられたMK2そのマンマです。基板写真を見ていただければ、回路基板をはみ出して、横にさらにゴテゴテとパーツが配置されているのが見えるかと思います。推測とはなりますが、66年初頭にMK1.5回路を製品として発表しつつも、よりハイゲインなファズを作るためさらにパーツ追加を施し、こういったあたかもプロトタイプ的な回路基板となったままMK2がその年の春に発表されたってのも頷ける話ではあります。なんたってMK1.5は2〜3ヶ月しか市場に出回っていない、という短命な運命ですが、その運命をこの回路からホンノリと伺い知ることができますよね。

 さてさて、音です。ショート・サーキット・ボードに搭載されたオリジナルのMK2初期バージョン回路では、入力段のキャパシターが1ケない、と確認されています。当然この青い復刻品もそのとおりの回路となっています(今回の復刻品は、デヴィッド・メイン本人が66年の現物を実際に確認し、そのままの回路を再現しています)が、そのせいなのかどうなのかちょっと不明ながらも音はMK1.5に近いものがあります。デヴィッド・メインもこのファズに関して「一般的なMK2サウンドよりはブライトで、フルアップして弾くとホンのちょっとだけささくれ立った印象がある」と語っていますが、まったくそのとおりの印象です。

 つまり、キチンとセッティングしないとモーモーとこもったコンプ感丸出しのファズ音になりがちな、一般的なTONE BENDER MK2の音とは印象が違います。簡単に言えば、他のMK2ほどは歪みませんし、ローもあまり出てきません。また歪みの傾向も荒々しい、ツブの大きな歪み、といえそうです。えーと、一応確認しておきますが、この音もTONE BENDER MK2ですし、さっき書いた「こもったコンプ感丸出し」の音もTONE BENDER MK2の音なんですよ。ね? TONE BENDERって面倒臭いでしょう?(笑)。面倒臭いと知りながら、話を続けます。

 たとえばMANLAY SOUNDのMK2クローン「SUPER BENDER」で、内部トリムポットをいじると「まるでMK1.5のように、ギターのVOLコントロールで歪みを調節できる/カリカリのクランチ音を作れる」という話を何度か書きましたが、こちらの青いD.A.M.製TONE BENDERは、そのカリカリのクランチ音があっさりと出てきます。MK1.5なら当然の話ですが、MK2回路でこれができるのは滅多にありません。ただし、逆の音、つまりこの青いTONE BENDER MK2では、図太いMK2の強烈な歪み音は出ません。そういう意味では繊細で控えめなTONE BENDER MK2と言えるかも。

 そうそう、話がパーツに戻りますが、搭載されているトランジスタは無印のブラックキャップOC75が3ケ、です。これも以前記したことがありますが、英国製パーツにこだわるガンコ者のデヴィッド・メインは、こちらのファズに関しては無印の(おそらくオランダ製と思われる)OC75を使用しています。これは「このモデルのトランジスタはゲインとトーンだけで選んだ」と本人が説明していますが、ひとつ自身のコダワリを捨ててみた、ということになるんでしょうかね。

 さて、このモデルは前述したとおり既に発表されてから3年も経っているわけですが、このファズを使ったサンプル動画を3ケほど張っておきます。ひとつはすでにD.A.M.製品ではおなじみのデモンストレーター、pinstripedclipsさんのデモ動画。うん、相変わらずカッチョいいオケで披露してくれますね。たしかにバンド・サウンドの中でどう聴こえるか、というサンプルとしては絶好の動画なのですが、ツマミのコントロールとか、単体でどう聴こえるか、というのも気になって仕方ない当方のようなTONE BENDERヲタクにとっては、これだけじゃあ良くワカンネエや、というわけです(笑)。

 そこで2つめの動画。テレキャスと、HIWATT DR103で出したギター&ファズのみのデモ動画です。テレキャスを使ってるというせいもありますが、このファズ単体の歪みがずいぶんトレブル寄りにセッティングされているのがおわかりいただけるかと思います。

 で、動画をもうひとつ。同じTONE BENDER MK2ですが、通常現行品(D.A.M.製で、MULLARD OC84をつかったもの)、それとこの青い限定版(D.A.M.製で、ショート・サーキット・ボードのバージョン/無印OC75をつかったもの)の弾き比べ動画です。正直、この動画ではあんまり違いがわかりませんね(笑)。でも両方同時に試す機会のある人は、世界的にもそんなにはいないと思われるので、一応参考までに載せてみました。

 アンソニー・マカリ(SOLA SOUND)やデヴィッド・メイン(D.A.M.)が口を揃えて「これまでD.A.M.が製作したファズのなかでも、最もブライトなサウンド」という宣伝文句でこの青いTONE BENDERを説明していますが、それは確かにそのとおり、というこのファズ。なかなか面白いです。例によって結構お値段も高いですし、今からオーダーしてもどうせ到着するのは3年後とかになりそうなので、万人にオススメするものではありませんが(笑)。
 

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